定数倍の法則による導関数の求め方

定数倍の法則定数係数の法則とも呼ばれる)は、定数倍の関数を微分するために使われる微積分の法則です。この法則は、定数倍を含む関数の導関数を求める過程を簡略化します。定数倍の法則は、「定数倍の関数の導関数は、その定数倍の関数の導関数に等しい」と述べています。

定数倍の法則の公式と正式な定義

定数倍の法則の公式は次の通りです:

ddx(cf(x))=c·ddx(f(x))

ここで、c は定数で、f(x)x の関数です。

関数 g(x)=c·f(x) に対して、c は定数で f(x)x の関数とすると、g(x)x に関する導関数は次のようになります:

g(x)=ddx(c·f(x))=c·ddx(f(x))=c·f(x)

定数倍の法則の直感的な理解

定数倍の法則を直感的に理解するために、次の例を考えます。f(x)=x2(以下のオレンジ色のプロット)を考え、定数 c=3 を掛けて c·g(x)=3·(x2)=3x2(以下の青色のプロット)を得ます。

g(x) のグラフを考えると、f(x) のグラフと同じ形ですが、3倍の縦方向に伸びています。これは、任意の x の変化に対して、g(x) の変化は f(x) の変化の3倍であることを意味します。

関数のある点での導関数は、その点における関数のグラフに接する直線の傾きであることを思い出してください。g(x) のグラフが縦方向に3倍伸びているので、任意の点における g(x) の接線の傾きは、対応する点における f(x) の接線の傾きの3倍になります。

したがって、g(x) の導関数は f(x) の導関数の3倍になり、これが定数倍の法則が述べていることと正確に一致します。

定数倍の法則を適用する手順

  1. 定数係数を識別する: 関数 f(x) を掛けている定数 c を特定します。

  2. 内側の関数の導関数を求める: 定数倍された関数の導関数 ddx(f(x)) を計算します。

  3. 定数と導関数を掛ける: ステップ1の定数 c とステップ2の導関数 ddx(f(x)) を掛けて、最終結果を得ます。

定数倍の法則の証明

定数倍の法則を証明するために、導関数の定義を使用します:

g(x)=limh0g(x+h)g(x)h

ステップ1:g(x)=cf(x) を導関数の定義に代入します。

g(x)=limh0c·f(x+h)c·f(x)h

ステップ2:定数 c を外に出します。

g(x)=c·limh0f(x+h)f(x)h

ステップ3:limh0f(x+h)f(x)h=f(x) であることを認識します。これは f(x) の導関数の定義です。

g(x)=c·f(x)

したがって、定数倍の関数の導関数は、その定数倍の関数の導関数に等しいことが証明されました。

  1. f(x)=3x2+5x の導関数を求めます。

    定数倍の法則と累乗の法則 を使用して、次のようになります:

    f(x)=3·ddx(x2)+5·ddx(x)=3·2x+5·1=6x+5
  2. g(x)=2sin(x) の導関数を求めます。

    定数倍の法則と正弦の導関数を使用して、次のようになります:

    g(x)=2·ddx(sin(x))=2·cos(x)
  3. ある粒子の位置が s(t)=4t32t で与えられる場合、粒子の速度と加速度を求めます。ここで、s はメートルで、t は秒で測定されます。

    速度を求めるには、定数倍の法則と累乗の法則を使用して位置関数の導関数を取ります:

    v(t)=s(t)=4·ddt(t3)2·ddt(t)=4·3t22·1=12t22

    加速度を求めるには、速度関数の導関数を取ります:

    a(t)=v(t)=12·ddt(t2)=12·2t=24t

    したがって、粒子の速度は v(t)=12t22 メートル毎秒、加速度は a(t)=24t メートル毎秒毎秒です。

  4. 総コスト関数が C(x)=100x+500 で与えられる場合、限界費用関数を求めます。ここで、C(x) はドルでの総コスト、x は生産された単位数です。

    限界費用関数は総コスト関数の導関数です。定数倍の法則を使用して、次のようになります:

    MC(x)=C(x)=100·ddx(x)+500·ddx(1)=100·1+500·0=100

    したがって、限界費用は1単位あたり常に100です。

  5. 微分方程式 y4y+4y=0 を解きます。

    これは定数係数を持つ二階線形微分方

程式です。これを解くために、yr2yry1 に置き換えて特性方程式を求めます:

r24r+4=0

この方程式を因数分解すると:

(r2)2=0

したがって、特性方程式は r=2 で二重根を持ちます。これは微分方程式の一般解が次のようになることを意味します:

y(x)=(C1+C2x)e2x

ここで、C1C2 は初期条件によって決定される任意定数です。

定数倍の法則は、特性方程式で yr2yry1 に置き換えた際に暗黙的に使用されました。これは、erx の導関数を求めて定数係数を掛けることに相当します。